第17章 悠……

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「嬉しい事かもしれませんが、面会時間は守ってください さらに! 大人数は困ります!」 「あ、……はい」 可愛らしい顔をして、やっぱりお母さんなんだ、と 思った瞬間。 「……こえー」 ポソリ、と呟いたのは吉川ドクター。 そして 「お前も早く帰れよ」 と、付け加えた。 何となく睨み合いをする2人の中間で パチパチと弾けるスパーク。 なんだ、犬猿の仲?? 「新城さん、お大事に」 折原さんがペコン、と、ひとつ頭を下げて歩いていく。 「……混み入った事をうかがいますが」 「何ですか新城さん」 「お二人は仲が悪いんですか」 いや、ドクターとナース、色々な噂もあるし なんかしらの闘いがあったりするんだろうけど。 吉川ドクターはぶっ、と吹き出した。 「仲、悪いように見えました?」 「は、いや、普段折原さんは滅多にあんな顔をされないんで……失礼しました」 「そうですか、それはこちらのミスです ご心配なさらず、 折原とは大の仲良しです」 にこやかに笑いながらその 精悍な顔を緩ませた吉川ドクターは とても嬉しそうだった。 大の仲良し、ってのもなかなか引っかかるものがあったが まぁ、敢えて聞かない事にしよう。 「じゃあ、僕もこの辺で失礼します」 「はい、後はお任せ下さい」 心の中がとても軽かった。 悠が目を醒ました。 夢の中と同じように、どうしたのか、と まだ覚束ない呼気と吸気を精一杯繋げながら オレに呼び掛けたんだ。 ……どうした、じゃねぇ。 ほんとに。 本当に よかった。
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