第17章 悠……

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「初めてにしちゃ上出来、悠ちゃん」 「すっごい勢いで飲むんだぁ!!」 小さく上下に一定のリズムで揺れる 亘の頭を見ながら悠を労った。 きやぁきゃあ、といちいち感嘆をあげ 亘にラブを飛ばしまくる悠を見て …………なんか、複雑な気分になるオレは おかしいのか。 いや、そりゃ、息子だしね? 本当に命懸けでこの世に送り出した 待望の男子だしね? めちゃめちゃいいシーンなんだよ? ひと月ぶりに意識が回復した母親が 初めて息子に対面する、ってゆーね? しかも、ミルクをあげるのも初めてで なのに。 なに、このちょっとした嫉妬、的な感覚は。 ふっ、と笑いが込み上げた。 「なに、笑ってるんですか」 ねっとりとした視線でこっちを突き刺す悠が ぶぅとほっぺたを膨らませた。 「へたっぴ、とか思ってるんでしょ」 「思ってないよ」 「むぅ!」 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」 「あ、泣いた」 空の哺乳瓶を貰って 「ほら、悠、あやして、あやして ひたすら、あやす」 「あ、そか」 悠は腕に抱いた息子を抱き直す。 トントンと背中をノックしながら また、大きな声で泣き出しそうな亘を…… もう、オレの目は溶けるかもしれない。 悠が何をしていても流れてくる滴は さっきも言ったように 悲しいからじゃないんだ。 全ての流れの中に、悠と亘がやっと一つになった事が 堪らなく嬉しくて 『ゲフッ』 「わ!でっか!」 亘の思いもよらぬくらい大きなゲップも ケラケラと笑う悠も そして いつまでも感動の渦に巻き込まれているオレも 全部が嬉しかった。
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