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「雄一郎! そもそもお前が、あれを真澄の婿などにと考えたのが間違いだ!」
それに雄一郎が憮然として答える。
「……じゃあ良かったですね。手を出されなかったんですから」
「けしからん! あやつは真澄のどこが不満だと言うんじゃ!」
「手を出して欲しいんですか? 欲しくないんですか?」
「…………」
互いに険悪な表情で睨み合っている間に、清人の携帯に電話をかけてみた浩一は、盛大に舌打ちしてから乱暴な口調で毒吐いた。
「……駄目だ。電源を切ってやがる。あの馬鹿野郎、姉さんを泣かせやがって……。ズタボロにしてやる」
「お、おい……」
「浩一?」
常には無い浩一の物言いに二人は思わず視線を向けたが、浩一はそんな二人にチラリと目を向けただけで、すぐに違う番号を選択して電話をかけ直した。
「ああ、清香ちゃん? 浩一だけど。清人は家に居るかな? 居たら悪いけど、電話口に呼んで欲しいんだ」
口調はいつも通りでも、顔付きが険しいままの浩一を二人は黙って見守ったが、ここで突然浩一が声を荒げた。
「え?…………何だって!? それ本当かい? 清香ちゃん!」
いきなり叫んだと思ったら顔色を変えて電話の向こうを問い質し始めた浩一に、二人が驚いて事の成り行きを見守る。
「うん……、ああ、そうだね。俺からも心当たりは当たってみるから。……引き続き川島さんに泊まりに来て貰うんだよ? ……ああ、そんなに心配しなくても大丈夫だから。それじゃあ、また電話するからね」
そして幾つかのやり取りをして通話を終わらせた浩一が、苛立たしげに二人に向き直って、簡潔に事情を説明した。
「清人が消息不明になりました」
「はあ?」
「消息不明とは?」
怪訝な顔をした二人に、浩一が苛立たしげに告げる。
「清香ちゃんに行方も帰宅予定も言わず、『このまま暫く帰らないから』とだけ電話で言ってから、音信不通になったそうです」
あまりといえばあまりの事態に、総一郎と雄一郎は揃って呆れた声を上げた。
「……何を考えておるんだ? 清香を一人で放置しおって!」
「過去に、そんな事は無かったよな?」
「ええ、皆無ですね。可哀想に清香ちゃん、ちょっとしたパニック状態でしたよ。いつ何時清人から連絡が入るか分かりませんし、引き続きアシスタントの女性に泊まり込んで貰う事にしました」
「それが良いだろうな」
「全く何がどうなっとるんじゃ……」
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