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これまでとは比べ物にならない怒声を浴びて、総一郎は瞬時に顔色を無くし、二人も驚いて真澄を見やった。その視線を一身に浴びながら、真澄が糾弾を続ける。
「大体お祖父様が、清吾叔父様の事をいつまでも許さなかったのが悪いんでしょう!? 叔父様は確かに学歴も財産も無かったけど、人の道に外れた事なんかする筈のない、立派な人だったわよ!! そんな事も理解できないで、叔父様の事を未だに盗っ人だの野良犬呼ばわりしているそっちの方が、人の見る目が節穴で、見識の無い大たわけだわっ!」
「何だと!? 言って良い事と悪い事があるぞ真澄!」
「お祖父様がずっと自分達の事を悪し様に言ってたのを、叔父様と清人君は敏感に感じ取っていたから、下手に親しくなってお祖父様の不興を買ったりしない様に、団地やマンションに送迎の際にも柴崎さんと接触しない様に気を遣っていた位だし、家まで送ってくれる時も、門の前までだったんだからっ!! ……さ、清香ちゃんが、家に来る様になってからも……、何度も誘ったのに、絶対、来てくれなくてっ……。お、お祖父様の、馬鹿ぁぁ――っ……」
そこでいきなり緊張の糸が切れた様に、床に座り込んで両手で目を擦りながら盛大に泣き出した真澄を見て、総一郎はもとより雄一郎も浩一も狼狽した。
「その、真澄……。分かった、儂が悪かった。今後あやつに対する態度は改める。約束するから」
「ほら、真澄。お父さんもこう言ってるから、取り敢えず泣き止め。そして、冷静に話し合おう」
「そうだよ姉さん。清人が他の女性と結婚するなんて有り得ないし」
浩一がそう口にした途端、真澄が殺気の籠もった目で浩一を見据えた。
「……何? それじゃあ、私が嘘を吐いているとでも言いたいの?」
「い、いや、そうじゃなくて! どういった会話の流れだったのか全く分からないけど、二人の間で何か大きな誤解があったんじゃ無いかと思う。清人は以前から、姉さんの事が好き」
「誤解じゃ無いわよっ! 清人君が一人暮らしをしてた頃、何度も一緒に出掛けてたけど、『以前清香の為に払って頂いたお返しに』と誘われていたし、お祖父様がお通夜の時に『あんなのと一緒になったせいで貧乏暮らしの上早死にさせられた』と喚いて、それが団地の人経由で清人君の耳に入って、それ以降誘っても貰えなくなったもの!」
その真澄の叫びを聞いた浩一は、流石に声を荒げて祖父に詰め寄った。
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