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「お祖父さん! 本当に叔母さん達のお通夜の時に、そんな事を言ってたんですか!?」
「いや、それより一人暮らしの頃に誘われていと言うのは、どういう事じゃ!?」
「真澄! 通夜の時のそれを、どうしてお前が知っている! 彼から聞いたのか?」
狼狽した雄一郎が慌てて問い質すと、真澄はそれに短く答えて絶叫した。
「お母様からです! それに、今回丸三日以上二人きりで居たのに、全然手を出して貰えなかったんだから!! どう考えても恋愛対象外って事でしょう!? さあ、笑いたければ笑いなさいよ!」
「…………」
流石に笑う事も怒る事も出来ず、さりとて下手に慰める事も出来ず、揃って微妙な顔付きで押し黙った三人を見て、再び真澄の中で色々纏めて切れた。
「……っ! ばっ、馬鹿ぁぁっ!! 出てけぇぇぇっ!! 二度とその不愉快な顔を見せるなぁぁ――っ!!」
泣きじゃくりながら本棚に走った真澄は、そこに整然と並べられていた本を掴み、三人に向かって力一杯投げつけ始めた。
「真澄、頼むから落ち着け!」
「ちょっと冷静に」
「姉さん!」
腕で顔や身体を庇い、防戦一方の総一郎達だったが、面倒臭くなったのか真澄がテーブルに駆け寄り、それを両手で持ち上げた。
「うわっ!」
「危ない!」
制止の言葉などあっさり無視して、真澄はそれを放り投げ、放物線を描いたそれから総一郎と雄一郎は辛くも身をかわして避けた。しかし続けて真澄が、無言のまま椅子を持ち上げる。
「駄目だ、二人とも下がって!」
半ば父と祖父を引き摺り出す様にして真澄の部屋を出た途端、背後のドアに生じたもの凄い衝撃音に、浩一は心底肝を冷やした。そして少し様子を窺ってから静かにドアノブを回してみたが、中から施錠されているのが分かって舌打ちする。
「姉さん! ここを開けてくれ! 落ち着いて話せば、誤解が解ける筈だ! とにかく清人と連絡を取って貰えれば、はっきりするから!」
浩一は乱暴にドアを叩きながら暫く姉に訴えたが、中から何も応答が無いため溜め息を吐いて諦めた。そして父と祖父を振り返って首を振りつつ、二人を促して階下へと向かう。
「参った……、奥の寝室に籠もってるみたいで、おそらく話を聞いてないな。だけど一体、何がどうなってるんだ?」
本気で頭を抱えてしまった浩一の横で、八つ当たり気味に総一郎が吠えた。
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