第24章 氷姫御乱心事件

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 淡々とそう告げて壮絶な笑みを浮かべた城崎に、広瀬と上原は普段真澄と同程度に沈着冷静な城崎が、真澄以上に怒り狂っている事が分かって心底肝を冷やした。  城崎が広瀬と上原をガッチリ捕獲してしまった為、清川から真澄を引き剥がす人員は谷山だけになってしまい、狼狽しながらも大して上背に違いがない真澄が渾身の力で絞め上げている手に自分の手をかけて引き剥がしにかかる。しかし真澄は清川に毒吐きながら、ギリギリとその喉を絞め上げた。 「例の二千万の契約だって継続出来たのは、何もてめぇの手柄じゃねえだろうが! したり顔でほざいてんじゃねぇよ!」 「柏木止めろっ! それ以上は拙い! 職場で死人を出す気かっ!?」 「上にはへいこらしまくって、陰で人の上前ばっかりはねてやがる、このコバンザメ野郎がぁぁっ!」 「ぐふぇっ……」 「皆、ボケッと見てないで、誰か内線で浩一課長か社長を呼び出せ! 柏木課長を止めろっ!!」  谷山が顔色を変えて絶叫した所で、周りの者達が慌てて動き出し、その場に居た所属部員総出で二人を引き剥がして、清川はほうほうの体で総務部に逃げ帰った。  そして、普段冷静沈着な真澄の姿とは一線を画したその恐怖の出来事は、柏木産業内で《氷姫御乱心事件》として暫くの間、密やかに語られる事となった。
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