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「……それで?」
「今の話、月曜の話ですよね?」
「清々しい程の切れっぷりですね……」
「御乱心事件って……」
清人が連絡を絶って姿を消した週末の土曜日。状況確認と情報交換の為に、清香とその従兄達、聡に恭子の面々は、臨時休業の《くらた》に勢揃いした。
その中で友之、正彦、聡と恭子の四人は、浩一から月曜に真澄が玲子に当て擦られた挙げ句家出し、その余波で柏木産業内で勃発した騒ぎを聞かされ、揃って疲れた様に感想を述べる。それを聞いた浩一も、うんざりとした表情で説明を続けた。
「呼ばれて俺が姉さんの職場に駆け付けた時、姉さんが清川部長に『二千万逃しかけた位でガタガタ言ってんじゃねぇ! あくまでも女が仕事が出来ないってほざくなら、週末までに新規契約で三千万取ってやろうじゃねぇか!!』ってタンカを切ってて……」
「真澄さん……」
「幾ら何でもそれは無理だろう……」
「週末までって、実質金曜までの五日間ですよね?」
「どうなったんですか?」
呆れと好奇心が入り混じった口調で問われた浩一は、溜め息を吐いてから結果を伝えた。
「それを聞いた二課以外の全員は、無茶だと思っていたんだが……。金曜までに合計で、三千二百万超の新規契約締結にこぎつけた」
「マジ?」
「本当に規格外だな……」
「勘弁して下さい……」
「よほど真澄さんの怒りが凄かったんですね」
しみじみと評した恭子だったが、ここでふと気になった事を尋ねてみた。
「それで、真澄さんの部下の方達と、その清川部長って方は無事なんですか?」
「二課の人達は昨日、勤務時間が終了すると同時に揃って屍になっていましたが、一応大丈夫です。ですが清川部長が、昨日から音信不通で行方不明になっています」
「はぁ? 行方不明って、どうして」
「色々あって。詳細は聞かないで欲しい」
「……そうですか」
思わず口を挟んだ聡から目を逸らし、浩一が低い声音で懇願した。それで聡も、これ以上踏み込んではいけない内容だと悟る。そこで会話が途切れたのを契機に、今度は浩一が問を発した。
「それで……、まだ清人からの連絡は無いんですよね?」
それを受けて、恭子が小さく頷いて説明を始める。
「はい、姿を消した翌々日に、広島に出没したのは判明しましたが」
「広島?」
男達が揃って怪訝な顔をすると、恭子が説明を加えた。
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