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「……だっ、大体ねっ! 四日も真澄さんと二人きりで、何やってたのよお兄ちゃんはっ!! 信じられないっ!!」
「うん、そうだよね?」
「本当に困った人だよね~、清人さんって」
ガンッと空になったグラスを座卓に叩き付ける様に置きつつ喚いた清香に、玲二と明良の笑顔が引き攣る。するとその横から顔を出した奈津美が、清香に新しいグラスを差し出した。
「ほら、清香ちゃん、叫んで喉が渇いたでしょう? はい、梅サワーをどうぞ」
「いただきますっ!!」
そして奈津美の手から引ったくる様にグラスを受け取った清香は、迷わずそれに口を付けて一気に飲み出した。
「ああぁ、清香ちゃん! そんな飲み方しちゃ駄目だって!」
「清人さんに知られたら怒られるよ?」
「はんっ! ここに居ない奴が怒れるもんなら、怒ってみやがれってんだ!!」
そんな雄叫びを上げて飲み続ける清香を見て、少し離れた所から奈津美を引っ張った修が、小声で妻を叱責した。
「おい、奈津美! お前どうして清香ちゃんに際限なく飲ませてるんだ? 幾ら梅酒ベースでも駄目だろうが!?」
しかし奈津美は苦笑いしながら夫を宥めた。
「大丈夫よ。最初の一杯は確かに梅サワーだけど、二杯目以降はただの梅ジュースの炭酸割りだから。酔いが回ってるのか、苛ついて味覚が鈍くなってるのか、すっかり誤魔化されてるし」
「グッジョブ奈津美! ……しかし梅サワー一杯で、あれなのか?」
修が懐疑的な視線を向けた先では、相変わらず清香の叫びが続いていた。
「しかも、しかもよ!? 据え膳に手を付けないで、突っ返すって何事よ! 何様のつもりだてめぇ、あぁん!?」
「ちょっ! 俺、清人さんじゃないから!」
「清香ちゃん、もう少しだけ冷静に! 落ち着こうね!?」
胸倉を掴まれて狼狽する明良と、清香を宥める玲二から視線を戻した夫婦は、互いの顔を見合わせてから深い溜め息を吐いた。
「……日曜からのあれこれで、清香ちゃんも色々溜まっているみたいね」
「やっぱり店を閉めておいて、正解だったな……」
修達がそんな感想をしみじみ述べる間も、清香の訴えは続いた。
「なっ、何が一番ショックだって言われたら……、私が真澄さんを可哀想だと思う事なんて、天地がひっくり返っても有り得ないと思ってたのに……。それがよりにもよって、お兄ちゃんのせいだなんてっ……」
「そ、そうだよね」
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