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声を揃えて頷くと、恭子は冷静に話を終わらせた。
「宜しい。奈津美さん。私にも梅サワーを貰えますか? 勿論本物を」
「はい、今お持ちしますね」
小さく笑って奈津美が一度遠ざかり、戻ってきた彼女がグラスを恭子に手渡すと、恭子は剣呑な目つきでグラスの中身を飲み干した。そして空のグラスを見下ろしながら、おそらく清人に対する悪口雑言らしい呟きをブツブツと小声で漏らす。
未だ号泣している清香と、目の前で不穏な気配を醸し出している恭子を交互に見ながら、周囲の男達はこれから一体どうなる事かと、げんなりしながら肩を落とし、波乱含みの《くらた》の夜は、騒々しいまま更けていった。
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