第1章 発覚

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 鬼気迫る清香の表情に聡は顔を僅かに引き攣らせ、周りが(何事?)と訝しむ中、清香は聡から手を離して自分のショルダーバッグを引き寄せながら話し出した。 「私もね? 一人でグダグダ言ってても仕方が無いって思ったから、極力考えない様にして忘れてたの。…………今朝までは」 「今朝? 何かあったの?」 「これよっ!!」  不思議そうに聡が問いかけたその時、清香はバッグから取り出した朝刊の一面らしい物を広げて指し示した。わざわざ指で示さなくても紙面の大部分を占めていたその記事に、(そう言えば、さっきどこかで聞いた名前だと思った)と聡は自分の迂闊さを呪った。それは他の面々も同様だったらしく、再び揃って黙り込む。 「さっきのいけ好かない斎木って、正にこの人なのっ!! 何これ!? 『巨額脱税』とか『迂回融資』とか『贈収賄』とか『粉飾決算』とか『芋づる式に逮捕者続出』とか!? ままままさかこれにお兄ちゃん、関わったりしてないよねぇぇっ!!」  掲載された顔写真の一枚を指差しながら、涙目で狼狽しつつ訴えてくる清香に、聡は冷や汗を流しながらも清香を落ち着かせようと否定の言葉を返した。 「い、いや、清香さん。幾ら何でも一介の作家である兄さんが、そんな事するわけないよ」 (やったな清人……) (ビンゴ) (喧嘩売って良い相手かどうか位見極めろよな?) (底抜けの馬鹿決定)  周りが頭を抑えつつ溜息を吐いていると、清香が尚も訴える。 「だって! 部屋に引き上げてから、何かブツブツ言いながら『ぶっ潰してやる』って! 後ろ姿しか見なかったけど、その時もの凄く声も見た目も怖かったんだからっ!! 腰が抜けて、前に回り込んで表情を確かめようって気も起きなかったんだから!!」 「確かに機嫌は悪かったみたいだね、兄さん」 (筋金入りのブラコンの清香ちゃんが怖がるって、どれだけだ) (そうか……。とうとう清香ちゃんも清人さんのブラックオーラが感じ取れる様になったか)  もう諦めと感心がない交ぜになった感想を皆が抱いていると、尚も清香が興奮しながら言い募った。
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