墓場まで逝きたくて

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私はその日、森の中にいた。 嫌な臭いがする。 いや、懐かしい臭いかもしれない。 私の横で寝そべる骸骨。 私の彼氏だ。 共に過ごした彼との出来事がその骨を撫でてあげると思い出される。 「あなたが悪いのよ?ふふ。何よ、そんなに見つめないでよ」 私は頭蓋骨に話しかける。 「ねぇ、あなたが何でそんな姿になっちゃったか?覚えてる?」 頭蓋骨は何も話さない。 当たり前か、骨だもの。 「ふふ。まぁ、いいわ。教えてあげる。あなたは私のことを懲らしめたの。『お前と共に過ごすと不愉快だ』とか『役に立たぬ女が!!』とかよく言ってたわよねぇ?暴力も振るったわよね?」 頭蓋骨の頭を軽く叩く。 「だからね、私はあなたに思ったの。……『殺してやりたい!!』ってね」 頭蓋骨に笑顔を向けて言う。 「でも嬉しかったなぁ。昨日、私の誘いに笑顔で受け入れてくれたことは本当に嬉しかったわ」 頭蓋骨を一回撫でてから低い声で言う。 「あなたは死ぬのにね……」 (そうよ、あなたはこの骸骨のように素直にやり取りしてくれればいいのよ。そうすれば私だってねぇ) 心の中でそう思いつつ話を進める。 「私は昨日の夜中にここのテントで寝ているあなたをこの刃物で刺したわ。まさか同じテントを買ってるとは思わなかったでしょう?ねぇ、痛かった?痛いわよね?苦しいわよね?そうよねぇ、私もそれぐらい痛かったんだから。私はそのテントと共にその夜に埋めてあげたわ。そして今夜、骨を回収してあげたわ。まさか骨になるのがこんなに早くなるとはねぇ。私は理系の知識なんてないからなおさらびっくりしたわ」 頭蓋骨は相変わらず同じ表情でこちらを見つめる。 「あなたの骨をそのまま外に放置しようとしたけどやめたわ。寒いでしょうからね」 私は白い箱に骨を入れていく。 足の骨……。 腰の骨……。 背骨……。 腕の骨……。 手の骨……。 そしてそれらの骨を入れた白い箱にその箱のフタを閉めた。その上に頭蓋骨を乗せた。 「ん?あなたの頭蓋骨を墓場まで持っていく理由?秘密じゃなきゃ教えてほしい?」 頭蓋骨はこちらを見つめている。 「そうねぇ、あなたはまだ私のこと好き?」 特に反応はない。 「じゃあ、教えてあげるわ。私はあなたのことがそれでも好きだった。だからこそあなたの墓場の位置をあなた自身の目で見て欲しいの……別にあなたと仲直りしたいとかそういうわけじゃないわよ?」 何も話さない。
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