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午後一時に開始された披露宴は、様々な騒動を繰り広げながらも五時過ぎに何とか終了し、出席者達は主役二人を冷やかしつつ、三々五々に帰って行った。清人と真澄は全員の見送りを済ませてから会場を後にし、着替えを済ませて幾つかの事についてスタッフとやり取りをしてから、その日の宿泊用に押さえてある上層階のインペリアルスイートに七時近くに入る。そして漸く人心地がついたところで、タイミングを計った様に食事の用意が整えられた。
ベッドルームやリビングに加え、ゲストルームにキッチン、ダイニング完備のそこでは、続々とホテルスタッフが入り込んでも手狭さは一向に感じなかったが、広々としたダイニングテーブルに料理を並べられて二人きりになった時、真澄はやっといつもの調子を取り戻し、挨拶をしてから黙々と食べ始めた。それを見た清人は、自分も手と口を動かしながら、面白そうに小さく笑う。
「やっぱり腹が空いてたんだな」
その台詞に、真澄はチラリと清人を睨んでから、気分を害した様に言い返した。
「当たり前でしょう? 視線を浴びまくりの所で、大口開けて食べられないし。第一、お色直しで中座する時間が長い事は分かっていたから、食べきれなくて無駄にならない様に、量を通常の半分以下にして貰っていたもの」
そう言ってひたすら食べ続ける真澄に、清人が更に話し掛けた。
「それだけ食欲があれば大丈夫だな」
「何が?」
「一応手加減はしたが、昼から相手をして貰ったから」
笑いを堪えながらのその台詞に、真澄は手にしていたフォークとナイフをガシャンと乱暴に皿に置きながら、盛大に怒鳴りつけた。
「あれを蒸し返さないで! 会場に戻ってから、正彦達に『あまり真澄さんに無理させちゃ駄目ですよ?』ってからかわれたの忘れたの!? 顔から火が出る程恥ずかしかったわよ!」
しかしそんな真澄の訴えも、清人はどこ吹く風で聞き流す。
「俺がからかわれただけだし、真澄が恥ずかしがる必要は無いと思うが?」
「何をしてたか察せられたと分かった時点で、大いに恥ずかしいわよっ!!」
「俺の奥さんは、相当な恥ずかしがり屋らしいな」
「もう何とでも言って! 本気で清香ちゃんに愛想尽かされても知らないから!」
顔を引き攣らせながら真澄が喚くと、ここで清人が怪訝な顔になって反応した。
「清香がどうかしたのか?」
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