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あなた達が色々順序や段階を飛ばしてくれたせいで、当初予定していた展開と違うので、今回シチュエーション的に見て《初お泊まり用》《新婚初夜用》《ハネムーン用》のどれを使うか迷ったのですが、香澄さんが「これなら清人君のハート鷲掴み確実だから!」と主張して譲らなかった、一押しのそれにしました。
予めそれを渡したら、絶対あなたは持参しないと思ったので、ホテル側にお願いしてちょっと仕組んで貰いました。だからホテル側の怠慢だと清人さんが怒っても、ちゃんと事情を説明して宥めるのよ?
それからホテル内のブティックとかにも話が伝わっている筈だから、ナイトウェアを買おうとしても販売拒否される上、生温かい目で見られる事確実だから止めておきなさい。
清人さんには、それをプレゼントするから、今日は我慢して大人しく何もしないで寝なさいと伝えて頂戴。良い子にしていないと他の物をあげませんから、ともね。
それではおやすみなさい。 玲子』
それに一通り目を通した清人は、無言で便箋を元通り畳みながら、盛大な溜め息を吐いた。
「……シチュエーションって。一押しって……、何なんだ、この突っ込み所満載の内容は?」
「私に言わないでよ!」
「それで? 真澄は大人しく着たわけだ」
些か疲れた様に清人が真澄の全身を眺めやると、真澄は僅かに顔を赤くしながら反論した。
「だって、下のお店にまで手を回してるなんて書かれたら! お母様は絶対そうしてるし!」
「……だろうな」
思わず遠い目をしてしまった清人に、真澄が尚も言い募る。
「今からタクシーを頼んで、買いに行くのもどうかと思うし」
「確かにまだデパートも、ギリギリ開いている時間だがな。しかし……、お義母さんは純粋に祝福してるだけか? いたぶられている気がするんだが」
そうして清人が再度真澄に視線を向けると、真澄は脱いだバスローブを胸元に軽く引き寄せつつ訴えた。
「あ、あのね! あまりジロジロ見ないでよ!」
「仕方が無いだろう。恥ずかしいだろうが、諦めるんだな」
「でも……、普通の時ならともかく、今はお腹が出てきて体型が崩れてるから、余計に恥ずかしいのよ。こんなの似合う筈無いじゃない……」
ぼそぼそとそんな事を言って視線を逸らした真澄を見て、清人は一瞬目を見開いてから、小さく噴き出した。
「何だ。そういうのが恥ずかしいって事より、そんな事を気にしてたのか?」
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