番外編 結婚披露宴迷走曲~可愛らしい妥協

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「何よ、悪い!?」  途端に振り向いて自分を睨み付けてきた真澄を、清人は苦笑しながら見返した。 「さっき俺が言った事を聞いていなかったのか? 俺的には蛇の生殺し状態なんだぞ? 腹が出てようがなんだろうが……、いや、寧ろ背徳的な感じがして、却って燃える」 「ちょっと!」  最後は真面目な顔と口調で言われた為、真澄はギョッとして反射的にベッドから腰を浮かせて後ずさった。その手首を素早く捕らえた清人が、笑いを堪えながら立ち上がる。 「冗談だ。正直なところ、出席者によってたかって飲まされた酒がなかなか抜けないから、今日はこのまま寝るぞ。やっぱり昼に一回やっておいて良かったな」 「全くもう……」  どこまで本気で言っているのか分からない事を言って、清人は慎重に真澄の身体を抱き上げ、優しくベッドに下ろした。そして自分もその横に寝転がりながら、足元に捲り上げられていた掛け布団を引き上げる。  しかし腰の辺りまで引き上げた所で一度動きを止め、服を着ている時には何とか誤魔化せている真澄の腹部の膨らみに手を伸ばし、そこにゆっくりと手を滑らせながら囁いた。 「今日は随分騒がしかっただろう。すまなかったな」  手元を見ながらのその優しげな声に、真澄は素直に応じる事ができずに、つい尖った声を出す。 「どう考えても、半分以上清人のせいですからね?」 「分かってる」  特に反論もせず、苦笑いした清人は再び羽毛布団を引き上げ、肩まで覆う様にした。そして真澄の身体を抱き込む様にしてから、思い出した様に言い出す。 「そう言えば……。お義母さんの手紙の内容だと、今回のこれ以外にも、似た様な物を色々用意してるって事だよな?」 「……そうでしょうね」  そこはかとなく嫌な予感を覚えながら真澄が取り敢えず同意すると、清人はそれは嬉しそうな笑顔で真澄の顔を見下ろしてきた。 「楽しみだな。色々着てくれるんだろう?」  その問い掛けに、真澄は横になったまま、小さく首を振って却下した。 「ただでさえ恥ずかしいのに、無理だから!」 「体型が崩れてるなんて、気にする必要は無いとさっきから言ってるんだがな?」 「私が気にするのよっ!」 「じゃあ出産して、体型が戻ったらどうだ?」  真顔でそう問い掛けられた真澄は、言葉に詰まってから、不承不承といった感じで言葉を絞り出す。
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