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即答した友之だったが、真澄はさほど感動した様子は見せず、黙って自分の指にはまった指輪に視線を落とした。少しの間そんな相手の反応を待っていた友之だったが、真澄が何も語らない為再度問い掛ける。
「それで……、真澄さん。先程の話の返事が欲しいんですが」
すると真澄は自分の指からゆっくりと指輪を引き抜き、それを友之に差し出しながら静かに告げた。
「……ごめんなさい、友之。私、あなたとは結婚出来ないわ」
「じゃあ、俺以外の誰かと結婚しますか?」
掌を広げ、指輪を受け取りながら友之が穏やかにそう尋ねると、真澄が小さく首を振る。
「ううん、誰とも結婚しない。多分一生ね」
「どうしてそう思うのか、聞いても良いですか?」
その問い掛けに、真澄は友之からバルコニーの床に視線を落とし、自嘲気味に笑いながら、その思うところを告げた。
「今、その指輪をはめてみて分かったの。誰の指輪だとしても欲しくは無いし、したくはないから。だからもう、一生独身で構わない」
しかし真澄のその言葉に、友之は僅かにからかうような口調で応じた。
「ちょっと言葉が足りませんね。誰かさんからの指輪限定で、欲しいんじゃないですか?」
「……何が言いたいの?」
「さあ?」
気分を害した様に真澄が睨みつけると、友之は曖昧に笑って指輪を元の様にポケットにしまってから、真澄同様庭の方に身体を向けた。そして独り言の様に話し始める。
「昔々……、ある所に、一人の貧相な子供がいました」
「友之?」
いきなり誰に言うともなく語り始めた友之の横顔を、横に居る真澄は怪訝な顔で見やったが、友之は淡々と続けた。
「複雑な生い立ちのせいで、小さい頃から世の中を斜めに見ていて、外面はともかく性格に問題のある子供でしたが、ある時その子供に転機が訪れました」
「ちょっと友之。あなたさっきから何を一人で」
「喧嘩に巻き込まれて怪我をした時に、助けて貰ったお姫様に一目惚れしたのです」
「……はぁ?」
完全に当惑した声を上げた真澄には視線を向けないまま、友之は淡々と一人語りを続けた。
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