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「その時、お姫様に無様な姿を晒してしまった子供は、自分をとても恥ずかしく、情けなく思いました。そしてまたお姫様に会える保証もないのに、万が一また会えた時、二度とみっともない姿を晒さない様、一念発起して頑張りました。その甲斐あって、何年か後にお姫様と再会できた時には、見違える位立派な少年になっていたのです」
「あの……、友之? それって……」
そこまでの話を聞いて、さすがに訝しげに真澄が口を挟んだが、友之は変わらず話を続けた。
「お姫様と再会できた少年はとても喜びましたが、本人にも周囲にもお姫様の事を好きだとは言いませんでした。お姫様を可愛がっている王様が、その少年を毛嫌いしていた為、必要以上にお姫様に近付いたり好きだと言ったりしたら、王様にお姫様が怒られたり、喧嘩になると思ったからです」
「…………」
思わず無表情になって黙り込んだ真澄をチラリと見てから、友之は少し困った様に続ける。
「お姫様が、家族思いの優しい人だと分かっていた少年は、自分のせいでその人の周りで波風を立てたくはありませんでした。加えてお姫様は誰にでも分け隔て無く優くて面倒見が良いので、自分に対しての好意も、他人に対するそれと大して変わりないと思っていたのでした」
「そんな! だってそれは!?」
慌てて何か言いかけ、しかし不自然に言葉を途切れさせた真澄に顔を向けながら、友之は小さく肩を竦めた。
「他人に対しては冷静に冷徹に対処できる少年も、自分の心の中で中心に位置しているお姫様に関する事には臆病なままで、お姫様にプレゼントを贈る事も、躊躇うような臆病な人間になってしまいました。お姫様は何でも持っていて、何を贈れば喜んで貰えるか分からなかった上、優しいお姫様は誰が何を贈っても笑顔で受け取ってくれるけれど、陰で嫌がられて捨てられたりしたら耐えられないと思ったからでした」
「ちょっと! 私、そんな事しないわよっ!!」
流石に憤慨して詰め寄った真澄を、友之は冷静に宥める。
「まあまあ、そう興奮しないで。架空のお姫様の話なんですから」
それに真澄が盛大に噛み付いた。
「喧嘩売ってるの? 友之。どこをどう聞いても、私と清人君の事でしょう!?」
「俺は清人さんの事だなんて、一言も言ってませんが? 何か思い当たる節でもありましたか?」
「…………白々しい」
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