君色想い

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今までこの容姿のせいで、俺に想いを寄せてくれる人は結構いた。告白も何度もされているし、好意を寄せられた相手の雰囲気は敏感に感じ取れる方だ。それは女の子からも男の子からも。 さっきからの琉聖くんの態度は明らかに俺への好意からくるものだろう。自意識過剰じゃなくて、たぶん高確率で恋愛的な意味のものだ。モデルなんて仕事だし、そっちの嗜好の人間も周りには多いし自分がそういう対象で同性から見られることに偏見はない。ないけど、琉聖くんもあの一方的に自分の気持ちを押し付けてくる奴らと同じなのかと思うと、何だかすごく残念だと思った。 「そう。たまたま気付いてくれたんだ。ありがと」 なぜだか少しイラっとするのを抑えて、にっこり微笑んでもう一度お礼の言葉を口にした俺に、琉聖くんは一瞬、傷ついたような悲しそうな表情をしてまた硬い表情を貼り付けると、徐に頭を下げた。 「差し出がましいことをして気分を害してしまいすみません」 「え?」 イラっとしていたのも吹っ飛ぶくらいびっくりして、またしても下げられてしまった琉聖くんの頂をじっと見つめた。 どうして謝るの? 俺、笑ってお礼言ったのに・・・俺が心で何を思っても、笑顔を見せておけば今まで誰も気付かなかったし、俺の心の中なんて気に留められることもなかった。 俺のことを好きだって告白してくれる子達もそれは同じで、みんな俺の容姿やモデルって肩書きしか見ない。本当は俺のことを想ってくれて、俺の心をちゃんと見てくれるそんなたった一人の誰かが欲しいのに、俺の願いは叶えられたことがない。それがどんどん虚しくなって、最近は好意を寄せてくれる子に疑心暗鬼すら感じる始末だ。 だから琉聖くんの俺に向けてくれる感情に気付いて、残念だなって思った。琉聖くんも他の人と同じなんだろうなって思うとすごく残念だって・・・だけど、違ったのか? 笑顔の奥に隠した俺の気持ちの変化が君にはわかるの?
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