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そう思っていたら、もしやこれは・・・って思う相手が現れたんだ。
相手は、もちろん琉聖くん。
あの日、可愛いなって思ってから仕事で一緒の時は必ず彼の姿を探してる自分がいる。
これまではスタイリストさんのアシスタント君という認識だけで、意識したこともなかったのに、今ではスタジオに入るとまず、彼を探してしまう。香代さんに指示されて忙しそうにしている琉聖くんを目にすると、微笑ましくて。彼の頑張ってる姿にパワーをもらえる気がするんだ。
この数週間、仕事が一緒になる度に目にしてきた琉聖くんは、見た目はとっても可愛らしい系だけど、仕事はテキパキこなしているし、上司の香代さんからも信頼されて可愛がられているのがよくわかる。俺に飴(と衣装)を届けてくれた時はほとんど顔を俯かせて大人しそうにしていたのに、仕事中はキリッとしていて格好良い。
かと思うと、香代さんや他のスタッフやモデルとの会話の合間に極稀に見せる笑顔がすごく可愛らしくて、ドキッとするのと同時にその笑顔を向けられているのが俺じゃないことにモヤッとしてしまう。
仕事中、俺のところへ来てくれることもあるけど、その他大勢へ向けるのと変わらない態度で接せられて、なんだかすごく物足りない。
あの時みたいに琉聖くんの頬を赤く染めさせたい。
焦ってうさぎみたいに慌てていた可愛らしい姿をもう一度見たい。
微かにじゃなくて、今度は満面の笑顔を俺だけに向けてほしい。
琉聖くんを見ていると、そんな自分勝手な欲が溢れてきてしまうんだ。
前に立花くんから本気で誰かを好きになったことがあるのかって聞かれたことがある。その時はもちろんあるって思っていたけど、そうじゃなかったのかもしれない。
だって、今まで誰にも琉聖くんに感じるような想いは抱かなかった。
ただ俺の見かけだけに興味を持っていて、俺の中身や心に気付いてくれない相手の子達に遣り切れない気持ちを持っていたけど、俺自身も同じだったのかもしれない。俺の方も相手の子達のことを本気で好きじゃなかったのに、相手にはそれを求めるなんて無理なことだったんだって、やっと腑に落ちた気がした。
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