ドローン

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参議院選挙の応援演説に総理が官邸を出発したとの連絡がはいる。 私は先乗りで総理が応援演説する村上候補の周辺の安全確認を他のSP達を指揮してあたる。 事前に連絡を入れた警視庁から派遣された、多数の警察官が交通整理をしている。 渋谷のスクランブル交差点周辺には総理が応援演説に駆けつけると聞いた人々が続々と集まって来ていた。 やれやれ警察官も大変だ、我々SPは総理の周辺警護だけだが彼らは総理の安全と共にこの群衆を捌かなければならない、もちろん車両の通行を停めるわけにもいかない。 受令機で周辺に配置してある部下から選挙カー周辺に異常無しと報告を受けていたがその最中に白バイに先導された総理の車が滑り込んできた。 素早く警護のSPが車を取り囲み一人が後部ドアを開け、安達総理が車から降り立つと声にならない響きがあがる。 安達総理が軽く右手を挙げて観衆に答えながら選挙カーに向かって歩きだすと、すかさず部下の一人が先導し周囲をさりげ無く選挙カーの周辺にいた部下のSPがガードする。 私は選挙カーの上に先に上がり周辺を見渡し安全を確認すると先に上がっていた部下が総理が選挙カーの上に上がるのを手助けしながらさりげ無くガードする。 よし、手筈は万全だし部下のSP達の動きにも抜かりはない、周辺に配置された警察官は交通整理が主任務だが私服の警察官達は上手く群衆の中に紛れて不審な動きに目を光らせている。 まだ村上候補者の演説が続いている。 だが私は何かが気になる、と言うか後頭部を小さな虫がはいまわる様な不快感が沸き上がってくるのを抑えられない、何だろうこの不快感は?今迄の長いSPやSP指揮官として暮らしてきて経験の無い感覚だ、周辺の群衆を確認し次に群衆の上周辺のビル群そして屋上に屯して見下ろしている人々。 村上候補の演説が終わり 「私の応援演説に安達総理大臣が駆けつけて下さいました」 そう挨拶して一歩横によけ中央を総理に譲った。 万雷の拍手の中にこやかに手を振り村上候補からマイクを受け取り聴衆に向かって深く礼をして 「皆さん我が党は今現在直面している経済的危機に対し・・・」
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