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 由希は笑顔で傘を投げて飛んだ。 「雨降ってーー」 「地固まらないって」  固まるどころか水溜まりの上に落下し、由希は泥水を撒き散らした。 「ゴメンッ恵美」  泥まみれの恵美に飛びついた由希の体は、恵美を通り越して田んぼに転げ落ちてしまった。  ぬかるんだ田んぼから慌て起き上がると、恵美は由希を見ないで話し出した。 「あーあ、汚れちゃった。急いで洗わなきゃ。じゃあ先帰るね」 「待って、恵美」  恵美は由希の声が聞こえないかのように、走りだした。  田んぼの中で由希が見たのは、いつものように交差点で突然右を見て驚いた顔をして、消えてしまう恵美だった。  「まただ……どうしたら帰って来てくれるの?」  あの雨上がりの事故の日を再現するたびに現れる、由希にしか見えない恵美は、あの日と同じように消えてしまう。 「もう一回……。雨降ってーー」  由希は笑顔で傘を投げて飛んだ。
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