二章

2/8
前へ
/40ページ
次へ
式は灯篭館を見渡してみた。 その名の通り、様々な種類の灯篭が多数ある。式が見たことのない灯篭もあるくらいだ。建物も神社のような作りになっていて、一見旅館とは思えないほどである。そういった雰囲気を意識してか、周りには近代的なものは一切ない。周りにあるのは、駐車場からいける森林とその先にある公園だけだ。 式は携帯の電波を見てみたが、案の定圏外である。近くにあった案内板を見てみると、この先にある公園は結構広いが遊具などはなく、公園というよりは休憩所のある散歩コースみたいなものらしい。 先ほども見たが、旅館のすぐ近くに大きな紙灯篭がある。2メートルくらいの高さはありそうだ。横幅は100cmくらいだろうか。 駐車場はそこまで大きくなく、40台くらいなら停められそうな大きさである。 旅館の入り口付近には、いくつもの竹灯篭がある。大きさはまちまちで、1メートルくらいのものもあれば、10cmくらいのものもある。今はまだ火がついていないが、夜につけると薄気味悪い雰囲気を醸し出しそうである。 そんなことを考えていた式だが、あることに気が付いた。 「あれ…?土日なのに人が少ないな」 そんな式の疑問に、伊藤が答えた。 「お前もうわさは知っているだろ?この旅館じゃ人が何人も死んでいるんだ。客が来なくなるのも無理はない」 「それに、ここにはパソコンもテレビもない、電波も通らない、近くにコンビニや娯楽施設はない、となると現代っ子には結構つらいしな。こんな旅館にはマニアぐらいしか来ないよ」 松田が続けて答える。 「ふーん。旅館経営もうまくいかないもんなんですね」 「ああ。経営はそうとうやばいことになってるみたいだな」 そんな会話をしていた式たちに、声がかけられる。 「おーい。やっと来たか」 声の主は神藤だった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加