1人が本棚に入れています
本棚に追加
式は灯篭館を見渡してみた。
その名の通り、様々な種類の灯篭が多数ある。式が見たことのない灯篭もあるくらいだ。建物も神社のような作りになっていて、一見旅館とは思えないほどである。そういった雰囲気を意識してか、周りには近代的なものは一切ない。周りにあるのは、駐車場からいける森林とその先にある公園だけだ。
式は携帯の電波を見てみたが、案の定圏外である。近くにあった案内板を見てみると、この先にある公園は結構広いが遊具などはなく、公園というよりは休憩所のある散歩コースみたいなものらしい。
先ほども見たが、旅館のすぐ近くに大きな紙灯篭がある。2メートルくらいの高さはありそうだ。横幅は100cmくらいだろうか。
駐車場はそこまで大きくなく、40台くらいなら停められそうな大きさである。
旅館の入り口付近には、いくつもの竹灯篭がある。大きさはまちまちで、1メートルくらいのものもあれば、10cmくらいのものもある。今はまだ火がついていないが、夜につけると薄気味悪い雰囲気を醸し出しそうである。
そんなことを考えていた式だが、あることに気が付いた。
「あれ…?土日なのに人が少ないな」
そんな式の疑問に、伊藤が答えた。
「お前もうわさは知っているだろ?この旅館じゃ人が何人も死んでいるんだ。客が来なくなるのも無理はない」
「それに、ここにはパソコンもテレビもない、電波も通らない、近くにコンビニや娯楽施設はない、となると現代っ子には結構つらいしな。こんな旅館にはマニアぐらいしか来ないよ」
松田が続けて答える。
「ふーん。旅館経営もうまくいかないもんなんですね」
「ああ。経営はそうとうやばいことになってるみたいだな」
そんな会話をしていた式たちに、声がかけられる。
「おーい。やっと来たか」
声の主は神藤だった。
最初のコメントを投稿しよう!