序章

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「式くん、お話があります」 式と呼ばれた少年は机に伏せていた顔をあげ、後ろを向く。 そこには黒髪ショートカットの少女の姿が見えた。身長は160後半くらい、といったところか。 「君は……」 「私はクラス委員長の榊です」 榊という少女は言った。 そうそう、榊さんだったな……と式は思いだす。 「それで、話って何かな?」 「あなたの学校生活についてです」 学校生活?と式は疑問に思った。 「それってどういう……」 「覚えがない、とは言わせません。私たちがこの学校に入学してから一か月がたちましたが、あなたには友達ができましたか?」 「それは……だって俺は、ほとんど学校に来てないから」 「学校を休んでいたのは病気ではないですよね?」 「ま、まあそうだけど」 「まったく。いくらここが完全学力主義の学校だからといって、休んでいいという理由にはならないと思いますが」 この学校は、完全学力主義制と呼ばれている。その理由は、この学校は中間、期末テストで高得点を取れればどんなに学校を休んでも内申点が保障されるという制度を採用しているためである。 つまり、この学校は学力の高さが全て、ということだ。 「ははは……。で、でもテストではそれなりの点はとってるよ。ほら、この前の小テストだって結構いい点とってたでしょ?」 「あなたのテストの点なんて知りませんよ……」 それもそうだな、と式は思った。
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