三章

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「この旅館の噂はご存じですか?人が相次いで亡くなっていくという…」 「はい、少しだけなら」 「あの噂は本当でして、ここ最近、死亡事件が多発しています。ほとんどが自殺なのですが、他殺も少なくありません。月に3人ほど亡くなっておりまして、その影響かいつしか人も途絶えてしまい、集客も見込めなくなってしまいました。旅館のオーナーが、今年中には閉館する予定と言われてましたし…」 「そうなんですか…」 殺人が起きた旅館に泊まりたいと思う人は少ないだろう。 客が来なければ売上も出ない。売上が出なければ経営ができなくなる。そうなれば、閉館は免れないだろう。 式は、この旅館に来たばかりだが、結構気に入ってしまったので何とかしたいと思った。しかし、一高校生にすぎない自分に何ができるのだろうか。式は、自分がちっぽけな存在なんだなと改めて感じさせられた。 不意に、榊から声を掛けられる。 「式くん、もうすぐお昼の時間ですよ。あまり角田さんにも迷惑をかけるわけにもいきませんし、このくらいにしておきましょう」 「そうだね。角田さん、ありがとうございました」 「ありがとうございました」 二人はお礼を言う。 「また何かございましたら、お気軽にお声をお掛け下さい」 角田は一礼し、立ち去る。 「それにしても」 榊が急に話しかけてくる。 「さっきの式くんはやけに饒舌でしたね。好奇心には勝てないということでしょうか」 「べ、別に…。前にも言ったけど、必要なこととかは普通に喋れるんだよ。相手の中に踏み込む内容の話が苦手なだけで」 「まあいいでしょう。その問題はこれから解決していけばいいのですし。それより、もうすぐお昼ですから早く食堂に行きましょう。お腹が空いてしまいましたから」 榊に手をひかれ、式たちは食堂に向かった。
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