三章

10/10
前へ
/40ページ
次へ
旅館に戻る途中、森林の山道で悲鳴が響き渡る。 「きゃあっ!」 何事かと式が振り向くと、沖田が地面に倒れていた。どうやら転んでしまったようだ。 「だ、大丈夫ですか?沖田先輩」 「う、うん。何とか…痛っ!」 沖田が足を抑える。挫いてしまったのだろうか。 「足挫いちゃったんですか?」 「そ、そうみたい。いたたた」 「大丈夫?歩けるの?」 吉野も心配そうに駆け寄る。 「うーん。ちょっと無理かも」 沖田はなんとか立ち上がろうとするが、ふらふらしてしまい非常に危険だ。 「困ったわねえ。誰かにおぶってもらいましょうか」 「それなら俺が…」 「式くんがおぶってくれるそうですよ」 松田が名乗りをあげたが、榊に遮られてしまった。 「え!?俺が?」 「ええ。大丈夫でしょう?」 そういって榊は式に目配せをする。 (そうか。沖田先輩とコミュニケーションをとれっていうんだな) 式は、榊の意図を理解した。 「わかりました。俺が背負いますよ」 「ほんと?ありがとー」 式はしゃがみ、沖田を背負った。 「お、軽いですね」 「そうでしょ?この体重を維持するのは難しいんだよ~」 この軽さだと45kgくらいだろうか。女子高生の平均体重が52kgくらいだから確かにこの体重を維持するのは難しいのだろう。 「旅館まで15分くらいだし、これなら大丈夫ですね」 「では戻りましょうか」 少しトラブルはあったが、式たちは無事旅館に戻ることができた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加