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「はい。飛車取りです」
「あっ。やばいな」
飛車を取られてしまった。すでに角行も取られているので、機動力がなくなってしまった。
香車は残っているが、うかつに進めることはできない。おとり用の歩の近くに、銀が潜んでいるからだ。
「うーん。どうしよう」
将棋の戦略など知らない式は、ただ駒を動かすことしかできなかった。
「ここならどうかな?」
そういって式が王の隣の金を動かしたら、
「いいのですか?王手ですよ」
と、いきなり式の王の隣に駒を置いてきた。
「そっちこそいいの?そんなの簡単にとれるけど」
と言って、式は榊が置いてきた駒を取る。
そこで、式は気が付いた。
「あっ…」
「もう遅いですよ」
式が駒を取るために銀を動かしてしまったので、榊の角行が式の王をとらえられる道ができてしまった。
「私の勝ちですね」
「くっ…」
「式くんはもっと周りを見たほうがいいですよ」
さっき自分でも思っていたことを榊にも言われてしまった。
その後も何試合か対戦したが、式の全敗で終わった。
「もうそろそろいい時間ですね」
時計を見ると、もう6時30分だ。一時間以上時間が経っていたことに式は気が付かなかった。
「そろそろ食堂に行きましょうか」
「そうだね」
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