四章

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「はい。飛車取りです」 「あっ。やばいな」 飛車を取られてしまった。すでに角行も取られているので、機動力がなくなってしまった。 香車は残っているが、うかつに進めることはできない。おとり用の歩の近くに、銀が潜んでいるからだ。 「うーん。どうしよう」 将棋の戦略など知らない式は、ただ駒を動かすことしかできなかった。 「ここならどうかな?」 そういって式が王の隣の金を動かしたら、 「いいのですか?王手ですよ」 と、いきなり式の王の隣に駒を置いてきた。 「そっちこそいいの?そんなの簡単にとれるけど」 と言って、式は榊が置いてきた駒を取る。 そこで、式は気が付いた。 「あっ…」 「もう遅いですよ」 式が駒を取るために銀を動かしてしまったので、榊の角行が式の王をとらえられる道ができてしまった。 「私の勝ちですね」 「くっ…」 「式くんはもっと周りを見たほうがいいですよ」 さっき自分でも思っていたことを榊にも言われてしまった。 その後も何試合か対戦したが、式の全敗で終わった。 「もうそろそろいい時間ですね」 時計を見ると、もう6時30分だ。一時間以上時間が経っていたことに式は気が付かなかった。 「そろそろ食堂に行きましょうか」 「そうだね」
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