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沖田がいなくなっただけでも大変なのに、火事まで起きてしまったら大惨事だ。
式たちは、灯篭に近づいた。
そのときに紙灯篭が不気味なシルエットを浮かべ、回っていることに気が付いた。
「中に何かはいっていますよ。おそらく、これが火が燃え移った原因でしょう」
「ええ。開けてみましょう」
角田が灯篭のファンを取った瞬間、式たちは驚愕した。
そこには、バラバラになった人間の手足と胴体が乱雑に置かれていた。
「きゃあああああっ!」
角田が悲鳴をあげた。
式は焼死体をちらりと見た。さすがに直視はできなかった。見てみると、焼死体の胴体の腹部に大きな傷が見えた。
(あれは…開腹跡?)
あの開腹跡が何なのか触って調べてみたかったが、勇気が出なかった。
「おーい、大変だ!」
そんな時、後ろから大声が聞こえた。
誰の声かはわからなかったが、声の主は式たちのもとにきた。
「こんなとこにいたか、式。大変なんだよ!」
「こ、こっちもですよ、神藤先輩」
声の主は神藤だった。
「い、伊藤が…伊藤が死んでいるんだよ!」
「え!?伊藤先輩が!?」
「ああ。103号室で殺されていたんだ。とにかく来てくれ」
「で、でもこっちはどうするんです?」
「だ、大丈夫です、式様。私が何とかしますので。警察にも連絡してみます」
そういう角田の声は震えていた。焼死体を間近で見てしまったのだから無理もない。
「警察に連絡って…できるんですか?」
「はい。緊急用の電話がありますので、そちらで連絡できます。この館では、何人も人が亡くなっていますので緊急用を用意したのです」
「じゃあそっちは角田さんにまかせよう。急ぐぞ」
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