四章

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「なあ式、俺たちで伊藤を殺した犯人をあばいてみないか?」 「え…?」 「俺は許せないんだ。仲間をこんなふうに殺したやつを」 「それは…俺も同じですけど、そんな探偵みたいなことできるわけないじゃないですか」 「俺たちはミステリー研究会だ。推理力はあるはずだ」 「考えが甘すぎますよ。小説や漫画には謎を解くためのヒントがあるかもしれないけど、これは本物の殺人事件ですよ。ヒントなんてあるわけないじゃないですか」 「……」 神藤は黙ってしまった。神藤の気持ちはわかるが、どうすることもできない。 だが、式も考えは同じだった。伊藤の仇をとりたいという、自分の気持ちを素直にいえる神藤が羨ましかった。 「ですが、俺も先輩と同じ気持ちです。とりあえず、警察の操作の邪魔にならない程度にできる範囲で考えてみましょうよ」 「式…我儘につきあわせてすまん」 「とりあえず現場保存をしましょう」 「そうだな。何も触らないようにしなきゃ」 「ええ。だけどその前に、この部屋を調べてみましょう。見渡すくらいなら大丈夫ですよ」 式たちは部屋を見渡してみた。 ドアから部屋の窓まで約5mほどある。その窓は開いていた。窓を覗いてみると、外の景色が見える。 この部屋にあるのは、式の部屋と同じく布団と机と時計があり、他は伊藤の荷物もあった。中を調べて見たかったが、現場保存を考え、やめた。 部屋のあちこちに、髪の毛がおちている。誰の髪の毛なのかはわからないので、そこは警察にまかせることにした。 その他にも、血痕が床や壁に多数ついている。血痕をよく見てみると、肉片らしきものがあちこちにこびりついていた。 伊藤の首についていた謎の液体も床に多数ついていた。多数あったので一つくらいいいだろうと思い、神藤に見つからないように触ってみたところ、ねばねばしていた。粘液だろうか。 そしてこの部屋に入ったときから感じていたが、異臭がひどかった。 「こんなものか。そろそろ出ようぜ」 式たちは二度と入ることはないであろう103号室を後にした。
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