一章

3/6
前へ
/40ページ
次へ
「私たちのクラスには問題児が二人います。一人は入学式の日に学校に来なかった式くんと、もう一人は入学式の日にしか学校に来なかった子です」 「入学式の日にしか来なかった…?」 「ええ。名前は朝霞龍吾くんといいます。かなり目立つ子でしたので、見れば一発でわかると思いますよ」 朝霞龍吾…そういえばクラス名簿で見たことがある名前だな、と式は思い出す。 「それで、なんで俺が問題児なんだ?」 「学校をずる休みしているからですよ。皆はきちんと学校に来て真面目に勉強しているのに、あなたたちは学校にほとんど来ない。この学校は完全学力主義性ですから、勉強しないと退学になってしまいますよ?」 強い口調で榊は言った。 「わかってるよ。定期テスト前に行われる対策講座には参加するつもりだし」 と、式は特に気にしていない様子だ。 「それより、今日明日はこの合宿を楽しもうよ」 式は話を逸らそうとする。 「そうね。榊さん、今は細かいことは考えずに楽しみましょう」 「先生まで…。わかりました。今は考えないでおきます」 二人の説得に、榊は折れた。 「それじゃ、車に乗りましょうか」 「あれ?会長は来ないんですか?」 「神藤くんは用事があるから先に一人で行くって連絡がきたから大丈夫よ」 「そうなんですか」 「ええ。彼を待たせるのも申し訳ないし、早くいきましょう」 そういわれたので、式たちは佐倉先生の車に荷物を詰め込んだ。 皆旅行用の大きいバッグやキャリーバッグで来ていたのに、式だけ小さいバッグだった。 「なんか、俺だけ場違いのような…」 「最低限のものだけ入っていれば大丈夫ですよ。着替えはきちんと持ってきたでしょう?」 「そりゃもちろん」 「なら大丈夫です。みんな待ってますし、早く乗りましょう」 佐倉先生の車に全員が乗った。 「じゃ、出発しまーす」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加