・最新鋭潜水艦 かいりゅう

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〝かいりゅう〟は二カ月前に就航し、処女航海と装備の調整を終えるとすぐに遠洋航海に出た。 選りすぐりの優秀な隊員が集められているものの、新型艦は従来と異なる設備と操作手順が多い。乗組員同士の連携も十分とはいえない。訓練とはいえ、勇気にとって気楽な航海ではなかった。 「荷物はなんですか?」  伊東が勇気の横顔に目をやる。その瞳に映る色は、お世辞にも好意的なものではなかった。 「水島三吾(みずしまさんご)3佐、楠木光(くすのきひかる)2尉、柳川友太(やながわゆうた)3尉の特殊部隊三名。訓練は彼らの希望に従えということです」 勇気はタブレットの命令書を細い指でめくって見せた。 「特殊部隊なんて、何の役に立つのですかね」 伊東はすぐに、彼らに対する関心をなくし、壁面のモニターに眼をやった。 そこには艦橋のカメラから送られる周囲360度の風景が映し出されている。瀬戸内の波は小さいが、それでも冬に向かい高さを増していた。波間に、様々な種類の船が映る。 「船影多数。監視、怠るな」  勇気の凛とした声が響き渡り、乗組員たちの背中に緊張が走った。
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