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アインスの南方に位置する街、レイズグリット。 街といってもそれほど広くはなく、村ではないが街というには狭すぎる、そんな中途半端な大きさだった。ただ、そこに住む者は田舎者ではないという僅かなプライドとこれからの発展を期待して街と自称しているのだ。 それを象徴するように建つのが聖ルミエル教会だ。 この街にはどう見ても不釣り合いな天にも届くかといった尖塔が建ち並び、街全体を見渡せる巨大な鐘楼塔には天使が羽を休めていた。とか、悪魔を石に変える音を響かせる。などといった噂がまことしやかに囁かれている。 建物に使われる石はこの教会の為にわざわざ削りだし、一枚でも高価な色ガラスをそこかしこに張られていた。 清貧・貞潔とは何なのだろうと問われても不思議ではないのだが、圧倒的な格差は妬みや嫉妬といった感情よりも憧れや羨望を呼び起こすものらしい。そこに意を唱えるのはごくごく僅かであった。
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