3人が本棚に入れています
本棚に追加
ある者は聖典を抱き、ある者はそっと目を閉じ、ある者は司教の言葉を反芻し、ある者は眠りこけていた。
有難い言葉と頭では分かっていても、凪いだ海のように時間のゆっくりと流れるこの空間では、単調な言葉のさざ波はいかんともし難い眠気を誘う。舟を漕ぎたくなるのもまた道理というものだ。
案の定、参拝者の頭のひとつが支えを失った人形のようにカクリと落ちた。
大して珍しくもない光景に気にする者もない。本人だけは慌てた様子で顔を上げ、夢から覚めたばかりといった具合に周囲を見渡す。
しかし、それは逆であった。
夢から覚めたのではない。この者は、今まさに永遠の夢の中へと落ちていく境界に立たされているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!