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数人のシスターが男の肩をとり部屋を後にした。成り行きを見守っていた人々が思い出したかのようにざわつき始めるが、司祭が再び言葉を紡ぎ始めるとそれも静まりミサが再開される。眠りこける者は誰もいなかった。 これこそが、このミサが特別であり皆が集まる理由なのだ。 人は弱い生き物だ。 その心は時に堕落し、疲弊し、傷付き、燃え上がり、悪魔を宿す。心に根付いた不穏の種は囁き、歪め、胎動する。いずれは宿主を食い破り、レギオンとして現出するのだ。 それを未然に防ぐのが教会の役目だ。心に根付いた種を浄め、人をあるべき矜持へと導く。今回のように、例え種が芽吹いたとしてもレギオンとして定着する前ならば人の姿のまま助けることもできる。 しかし、完全に悪魔として目覚めてしまったならば速やかにそれを排除するしかない。
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