第1章

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「でも死ぬ前に君と会えた。でも、残念だけれど私は明日の朝日は浴びられないだろう。私の体はそれほどに悪化してしまっている。それでも、最後に初恋の君に逢えたのは幸運だったと思う。ありがとう。文化壱四年七月参拾日――」 「私も――」 何か手紙に言おうとしても声が出ない。出るのは泣きじゃくる私の言葉にならない声だけだった。チグハグになった時間の中で、出会えてた彼との恋は両思いでも叶わない恋で。それも、もう終わってしまった。悲しいけれど、遠い昔に亡くなった時間を超えて出会った彼を思いながら私はその日、胸元の痣に触れながら泣き続けた。
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