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参加者は約30人いるが、私と史岳以外の人は全て違う部署の為、気付かれる事はない。
元々、私達の配属している部署は行事に非協力的なのを知っていたので、このツアーに同じ部署の人が来ない事は想定済みだったのだ。
これで、心置きなく思い出を作る事が出来る。
途中、サービスエリアで休憩を取りながら、バスは凡そ2時間掛けて茨城に到着した。
バスを降りると、少し遠目に見える横並びしたビニールハウス。
そのビニールハウス越しにも分かる赤々としたイチゴが私達を迎えてくれている。
『では、中に参りましょう。』
進行役の指示に従い、ビニールハウス内に入ると甘いイチゴの香りが鼻をくすぐる。
それと共に生唾を飲む自分の喉の音が鼓膜に響いた。
美味しそう。
真っ赤に染まったみずみずしい大きなイチゴが、私のお腹を鳴らす。
甘い誘惑。
いやいや待て待て。
私は何をしに来たんだ。
史岳との思い出を作る為に来たはずじゃないのか?
頭を振って冷静さを取り戻そうとするが、イチゴは私の鼻とお腹を掴んで離さない。
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