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テーブルに中華料理が盛大にならんだ。
おばさんはそそくさと
俊一のグラスにお茶をそそいだ。
グラスの中の麦茶はとても冷たく、
すぐ汗をかいた。
「しかし、
俊がこんなに強くなってくれるとはなぁ~
ガハハハッ」
おじさんは俊一にいつもこの話をする。
「えぇ?
こないだの大会では何処まで進んだ?」
「全国大会の予選までです。」
「そうかぁ、全国大会の予選かぁ!
ガッハッハッ!
初めて強くなりたいって言われた時には、困ったもんだと思ったが、
まさかこんなになるとはなぁ。
わからんもんだなだぁ。」
「そりゃあ俊ちゃんの努力よねぇ~」
「これが体も大きくなれば
全国優勝も夢じゃないぞ、俊!」
と、俊一の体をバンバンと叩く。
細い俊一の体が折れてしまいそうだ。
「これ由香里!
あんた自分のものばっかしてないで、
俊ちゃんの入れたげな。」
「えぇ~、そんな高校生にもなって…」
「俺大丈夫です。自分で…」
おばさんが口答えする由香里をキッと睨んだ。
俊一の背筋も由香里と一緒に伸びる。
出た、おばさんの本当の姿。
由香里はしぶしぶ従い、
適当にみつくろって皿に盛った。
最後に嫌味がてらに、茄子の何かをドサっと入れた。
「あんた体小さいんだから、
こんくらい食べなさいよ。」
「こ、こんなには…」
「俊、食べろ食べろ!体を作って全国だ!」
由香里はふんっと素知らぬ顔だ。
おじさんは、豪快にグラスのビールを飲み干した。
「俊、無理して食べなくていいぞ。」
と直兄
「そうよ。残してもいいからね。
けど俊ちゃん。食べて強くなりなさい。」
おばさんの零度の微笑みを見て、
俊一は顔がひきつった。
そうなのだ。ここに来るとすごい量を食べさせられるから、俊一は出来るだけ夕食をいただくことを遠慮していた。
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