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周囲に黴の生える排水溝へ流れる水に歯向かいながら這い出てくる白米達。
そんなトラウマの象徴である白米を見つめながら、既に悪夢で散々な目に合っていてうんざりしていた僕は、蛇口を最大まで捻り、無理矢理に白米を洗い流した。
僕の気が済む兆しが一向に訪れないせいで、水道水は垂れ流しになるも、幻覚を収めたいがために水道料金だけが加算され続けている事実を理解しながらも排水溝を凝視した。
本来は無視してもよいのだが、それはできない。
なぜなら。
「……雷太。また見たの?」
いつの間にか、悲しげな表情をした愛梨が、こちらを向いて立っていた。
僕はまた愛梨を悲しませてしまった。
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