夢魅る人々

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意識が戻ると、僕は洗面所の扉の前で壁の支えに助けられ立っていた。 扉越しから伝わる。不定期に途切れる光と、流れる続ける水の音。 余りに酷過ぎる幻覚を見た名残なのか、閉ざされた洗面所のガラス越しから影が映っていた。 影の正体は分からない。が、何かが吊るされ、ぎぃ、ぎぃ、と、揺れている。 それだけは、はっきりとわかった。 僕は恐ろしくなり、アルコールが残る身体に鞭を打ちながら外へ飛び出し、宛てもなくひたすら走り続けた。 (なんだ、なんなんだあれは) きっと幻覚だ。そう違いない。 半狂乱で走り続けた僕は、誰もいない公園を見つけて、そこのトイレへ避難することにした。 入る途中、【愛梨に似た何か】が着いてきていないかを確認し、安全を確認した僕は急いでトイレへ。 既に体力の限界にまで走り続けた身体は休憩を欲していた。
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