夢魅る人々

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「近所の人から通報がありまして、不審者が公園のトイレに籠ったまま出てこないということで駆け付けたのですが、何があったのですか」 「……なんでもないです」 「そんなことはないでしょう。では、首の痣は一体なんですか……?」 「首の痣……?」 破壊された扉の前に立つ警察の肩を打つけてふらふらしながら、手洗い場にある鏡の前へ向かった。 鏡が埃で汚れており、僕の姿はモザイク色になっていたので掌でゆっくりと拭った。 埃まみれになる掌の感触とあわせて、僕は覚悟を決めて拭い続けた。 段々と露わになる鏡に映るくたびれた僕。 そして、はっきりと姿を現す現実。
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