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それを自覚すると安堵感からか、涙が止まらなくなってしまった。
隠すように生傷の絶えない右腕で涙を拭うのだが、無意味だった。
「あの、もしかして……何かありました?」
「なんで、わかるんだよ……」
「だって、体中ボロボロじゃないですか……息も切らしていますし……」
本当のことを伝えようか。迷った。
もし真実を伝えれば、彼女と僕のいままでのような兄妹の関係は一生訪れなくなるだろう。
精神異常者を慕ってくれる人間なんて同類か聖女くらいだ。
前者はともかく、後者なんかほぼ奇跡のような存在だ。だから僕は愛梨を必死に愛したのだ。
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