夢魅る人々

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「疲れが溜まっているようだから、勝手に蜂蜜を多くしたけど大丈夫?」 加えて、愛情も。 先程まで溝の底に沈んだ感情は消え失せ、僕の胃袋は歓喜を謳い、溢れ出る唾液を飲み込みながら、感想を述べた。 「凄く美味しそうだ。ありがとう愛梨」 素直に感謝の念を表すと、愛梨は段々と林檎のように顔を赤く染め、熟れ出した。 僕は気付かない素振りで、胡坐を組んで丸型机の席に座って至高の珈琲を一口含む。 蜂蜜特有の優しい甘さと、独特の香りが混ざり、心の芯から元気が溢れてくる感覚を堪能した。 続いてはトーストだ。 口に含むと、程よい噛み応えの中に、蜂蜜でふやけた柔らかい感触が不規則に強調しあう。 蜂蜜の甘さと、焦げた部分のほろ苦さが合さり、めりはりのある味を引き出していた。
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