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分からない、という表情をし、くりくり、と、した栗色の瞳をこちらへ向けてくる。
本音は、「何を言いたいのか分かっているけど、貴方の言葉で聞かせて」と、言いたいのだろう。長いこと愛梨と一緒に暮らしている僕にとって、それくらいの意思疎通は朝飯前なのだ。
「最近まで幻覚に悩まされていた僕を、軽蔑したことない?」
「無いわよ。だって私、雷太のこと本当に愛しているんだもの」
「はは、そりゃどうも。」
愛梨に出逢えて、本当に良かった。
現実か夢か定かではない世界を見続けて精神的に参ってしまっていた僕を救ってくれた彼女のことを思うと、愛しくて、愛しくて、全てを食べてしまいたい。そんな貪りたい衝動に駆られ、理性が崩壊しそうになる。
朝からしてしまうのかと自身の節操の無さを恥じたが、どうしようもなかった。
本能に、勝てる訳がない。
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