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「……太、……雷太!!」
目の前には、微睡と現実の境に立つ僕を必死に現実へと呼び戻す愛梨が居た。
今にも泣きだしそうな表情だったので、申し訳ないと思い、現実へ戻る。
身体を起こすと、柔らかい愛梨の身体と、甘い香りが僕の神経と鼻腔をくすぐり、そこでようやく現実に戻れたと実感できた。
そのまま感覚の戻った両腕でそっと愛梨を抱き寄せて、柔らかい触感と甘い香りを堪能しながら気持ちを落ち着かせた。
「また……魘(うな)されていたよ……。」
「……そっか。心配かけて、ごめん」
僕は片手で抱いたまま、もう片方の手で肩まで伸びる綺麗な黒髪を撫でた。
その心地よい髪質を夢中で堪能していると、愛梨がこそばゆく耳元で呟いてきた。
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