夢魅る人々

9/255
前へ
/255ページ
次へ
引っ越しの相談をする度に、愛梨が寝言のように「この部屋が大好きなの」と、意思表示をするために、その度に僕の決心は揺らぎ、結局彼女のいいなりになってしまうのだ。 なぜ、引っ越しを拒むのか、その原因は未だによくわからない。 そんなことを思いながら顔を洗って歯を磨き、一連の動作を終えて口内を濯いだ。 そして排水溝に向かって、水を吐き捨てる。 排水溝に汚水が渦を巻きながら吸い込まれるのを、ぼう、と、眺めていると、いつもの幻覚を僕は目撃してしまう。
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加