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「じゃあさ、試しに……」
は?
今 な ん つ っ た !?
目の前で袖をヒラヒラさせて背伸びをしながら、牧野メグが言ったんだ。
理解を越えた内容だったので、寝ぼけているのかと思った。
もちろん、牧野が、だ。
俺は波はあるものの眠れない性質で。基本的に眠りも浅く万年寝不足。
牧野はどこででも寝る。
講義中、学食、中庭のベンチ。
羨ましくて、ついつい見てしまう。
さっきも講義中に寝てたので終わると起こしてやった。
次も同じの取ってるし、放っていても牧野の友達が来るんだろうけど一回で起きないし。
ヨダレとか、仮にも女子なんだから化粧直しとか時間かかるだろう。
「おい、終わったぞ」
「……ん」
目をうっすら開けて意識が浮上するのを待ってるのかなんなのか。
それを待ってる自分もなんなのか。
睫毛がツヤツヤしてるんだけど、他の女子みたいに根本が黒くないから、ツケマツゲは貼ってないんだろう。
もっと自然に見えるなにかを施してんのかもしれないが。
本人に聞いたら、寝るのでアイメイクは取れてしまうらしい。
だからマスカラはクリアだそうだ。
そういう気遣いが女らしいのかズボラなのかわからない。
ただ、牧野のまぶたと睫毛は寝てるときも起きた時も子供みたいだ。仕草も。
時々、京劇ぽい目元の女子がいる。
まばたきの時に見えてしまうので本人も知らないと思う。
別に悪くないんだけど。
頑張ってる感じがちょっと、ね。いつからそれを確かめてんのか忘れたけど。
牧野が、起き抜けにあくびなんかするもんだからこいつは油断しすぎだと毎回思う。
くるくる癖毛のショートで、外国のホームコメディに出てきそうな少年っぽい。毛先なんか蜂蜜みたいな色で陽に透けている。
自分でカラーリングしたって言ってたけど、明るくなりすぎちゃった、
って笑ってた。
理由が、寝てたからって。
バカじゃねえの。
皮膚かぶれたらどうしてくれんだ。
どうしてくれんだってなんだよ。
どうすんだ、だ。
牧野のバカ。
「お前よくそんな風に寝られるな。羨ましい。」
「そう?」
「誉めてねえよ、女のくせに気になんねえの」
「あー、男だったら良かったね」
「良くねえよ」
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