不眠症の僕と眠り姫

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牧野とそう親しい訳じゃない。 たまたま、選択した講義がいくつか重なって。 よく見るなあって程度だったのに。 今では、どこにいても見つけてしまう。 楽そうな格好してるのに、うっかり二の腕とか見えると細さにやべえって思う。 牧野の周りには男女問わず友達がいて、色々な話が聞こえてくる。 もっと女の子らしくしなよ、とか。 余計なこと言うな。 あ、今はゼミの飲み会なわけだが。 牧野はそのままでいいんだよ。 お前らみたいな斜め前髪ゆるロングふんわりで女子アナみたいな格好になったら、見分けつかないから困る。 男が牧野のグラスに注ぐ。 近い。 笑ってんじゃねえ。 どういうわけか牧野は意外とビールを飲むらしい。 「おかわりいる?」 「あ、俺」 酒はいらないから、と手でグラスをふさごうとすれば、ウーロン茶。 牧野が頼んだのか、酔っぱらいが増殖するなかでありがたかった。 「川島くん、前も飲んでなかったね」 「あー、そだっけ。牧野は酒好きなんだ?」 えへへ、と笑ってるのを見てたらなんかカッとなって腹が減ってるわけでもないのに、大皿から冷えた串カツを取って噛んだ。
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