不眠症の僕と眠り姫

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肩にふわりと感じた違和感。 「あ、ごめん、起こした」 「……ってことは俺寝てたんだな」 「うん、運べなくて。毛布こっち持ってきたんだけど」 「牧野にベッドに運ばれてたら朝の俺が凹む」 「いつもと、反対だね。起こしてくれるから」 「あ、目……化粧落とした?」 とたんに牧野が落ち着かない様子で離れようとする。 「あんまり見ないで!勝手に洗面所借りて悪いと思ったんだけど、このまま朝まで起きないと困るし」 「いや、そんなことは良いし風呂も使っていいけど」 良くなかった。 向かい合わせで、牧野のいつもの睫毛が見える至近距離で、風呂とか口にする自分を呪った。 「寝ぼけてるね、もっかい寝る?」 いや起きた。諸々。 「牧野は起きてんじゃん、珍しく」 「そのうち寝るよ」 そのあと、話題を変えたりコンビニで買ったというスティック粉末のカフェオレを飲んだりした。 緊張しているこいつ、やべえ可愛い。 だんだん受け答えがふにゃふにゃになって、見るからに眠そうだ。 「牧野、ちゃんと寝ろよ」 肩を揺すってみるけど、うん、というものの目が開かない。 ベッドに下ろすと、丸まった。 「猫みてえ」 眠気がそこまで来ていた。 牧野はいつもこんな風に綿の波のような眠気を纏っているのかもな。 毛布を掛けて、しまっていたタオルケットを出した。 「もうちょっと元気だったら襲ってんだぞ、わかってんのか牧野」 毛布を肩に被せる。 あ、俺いっつも牧野が寝てイラッとしてたのわかった。誰でもお前の寝顔見られるから。 いつだって知らないうちに、寝てるし。 牧野が眠る前、最後に見るのが俺で。 最後に聞くのが俺の声だったら良いのに。 一回、言いたかったのかもって気付いたらさ、 やめ。 寝てる奴相手に俺キモい。 寝る。
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