第2章 変化

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 いつもの事ながら半ば強引に約束を取り付けられ、昼休みに清人と社屋ビル近くの天ぷら屋に出向いた浩一は、席に落ち着くなり不機嫌な表情を隠そうともせず、問いを発した。 「それで? 今日、俺を昼飯を誘った理由は何だ?」 (こいつがこんな胡散臭い表情をしてる時は、ろくでもない話に決まってる)  長い付き合いでそこら辺は把握済みの浩一に、清人はどこかのんびりとした口調で応じた。 「そんな堅苦しく考えるなよ。同じ社に勤務してるんだ。偶には可愛い義弟の顔を見ながら食事を」 「ふざけるなら帰る」 「お前がそんなに短気な奴だったとは知らなかったな。まあ座れ。真面目な話がある」  反射的に椅子から立ち上がった浩一を、清人は苦笑混じりに宥めた。そして不満げな顔をしながら浩一が再び腰を下ろすと、清人が口調を改めて話し出す。 「実はこの前、お義父さんに、お前の見合い相手について相談された」  湯飲みを手にしてお茶を飲んでいた浩一は、それを聞いてピクリと反応したが、少ししてテーブルに湯飲みを戻してから静かに問い掛けた。 「……それで?」 「率直な意見を述べただけだ」 「そうか」  それだけ言ってテーブルの上で両手を組み、いつも通りの顔を保っている浩一に、清人はやや意外そうな顔で声をかけた。 「怒らないのか?」  その問い掛けに、浩一は苦笑いして答える。 「怒る? どうして。俺の友人と言う前に、婿養子の立場のお前としては、父さんに意見を聞かれたら答えるだろうし、反対する理由が無いだろう」 「そうか」  今度は清人が苦笑いの表情になったが、それを眺めた浩一は、気分を害した様に言い募った。 「俺をあまり見くびるなよ? 『裏切り者と罵るのかと思ってた』とかぬかしたら、本気で怒るぞ?」 「本気で思ってはいなかったが、お前は天然の猫かぶりだから、昔から次の行動を予測しにくいんだ」 「……何だそれは?」  思わず眉を寄せ、憮然として浩一が問い質そうとしたが、そこで頼んでいた定食が運ばれてきた為、口を噤んだ。そして二人で食べ始め、なし崩しにその話題が立ち消えになったかと思いきや、ご飯と味噌汁を一口ずつ食べた清人が唐突に話を戻す。 「さっきの話の続きだが、俺は自分を自己中心的なろくでなしだとしっかり認識してるから、意識して猫を被っているんだ」 「そうだろうな」
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