遊びたい子ら

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 私は、 「もうお絵かき帳はないよ。この長雨の中なんだから、どこからか持ってくるのも難しいんじゃないかなあ。」 と言ったが、キリンの形をした背の高い女の子が、 「お姉ちゃん、毎日お絵かき帳に絵を描いてんじゃん、それあたしたちにちょうだいよ!」 と返してきた。そこで私は、 「それはお絵かき帳じゃなくて、キャンバスっていうの。これはね、とてもとても大切な絵で、もうちょっとで完成するところだからねえ、渡せないのよ。」 と返事をしたが、子どもたちが聞き入れてくれるはずもなく、ライオンの格好をしたやんちゃな男の子が、 「なんだ、月の姉ちゃんのけちんぼ!オレたちの絵だって、とってもとっても大切な絵なんだい!じゃあ、しょうがないけど、壁に落書きしてやる!!」 と叫んで、立派なキバにくわえていたクレヨンで、壁に落書きをはじめた。 私は、すぐさま注意したのだが、そのときアポロは、困った顔の私とはうってかわって、笑顔をたたえ、 「せっかくだから、この子たちに模様替えをしてもらいましょう。外に出られないのだから、せめてこのコンクリートの中だけでも、景色を楽しみたいじゃありませんか?皆さん、とっても素敵な絵を描いてくださいね!」 と嬉しそうに言うのだった。
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