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「あ…。」
そこに居たのは、彼女だった。
その姿に驚愕した。
思っていたよりずっと背が高く、それに加えてハイヒールを履いていた。
だが、問題はそこではない。彼女はとても綺麗だった。本当に美しかった。
ただ…
いつも見ていた視線の先に、花ではなく、男が歩いていただけだ。
背の低い男が、彼女と指を絡め合って。
なんということだ!あの高い生垣が男を隠していたなんて。
俺は一年もの間、彼女のデートを見て胸を躍らせていたのか。
呆然と立ちつくす横を、
彼女のかわいらしい声と、男の少し高い声が睦まやかに交わされながら過ぎて行く。
でも…。
「なに?あの人、すんごい見てくるんだけどー。」
「おまえがカワイイから見蕩れてんだよ。身の程をわきまえろってんだよなあ?」
「やーだあ、もおー。キモいー。」
…中身は最悪だった。
なんだ、見た目はあんなに違っても、お似合いの二人じゃないか。
「あーあ、俺ホント…なにやってたんだろう。」
一言呟いて、俺は歩き出した。とりあえず、ハローワークに。
前の…いや、次の自分になる為にね。
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