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その夕食時に、僕は、ずっと我慢していた怒りを爆発させることになる。
なのに、僕は……姉が出かけるのを、止めることができなかった。
顔を手で覆いながら、まるで自分のものでないかのような言葉で、自問した。
「どうして……今日の出来事が、頭の中に、あるんだ?」
――帰宅した後、姉は普通通りだった。
会話の流れも、朝、したようなものになった。
怒りはある。彼女への想いもある。姉への怒りもある。
なのに、だ。
僕は、怒るよりも、その気味の悪さに頭を支配されていた。
「――どうして、こんなことを、したんだ」
怒るトーンも、あまり迫力はない。
もちろん、今までため込んだ分もあるはずだから、声は荒々しいはずなのだ。
(まるで、他人のようなんだ)
「ふふ……」
「なにがおかしいんだ、姉さん」
怒りの僕に、笑う姉。
すると姉は、あっさりと、その理由を口にした。
「だって、二度目だもの。怖いけれど、少し、慣れるものねって」
――僕には理解できない、奇妙な理由とともに。
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